S の ただ今ビサヤ語学習中(5):時制①
- 2018/04/02
- 08:00
時制①
これから2回にわたって時制の表現を少し詳しく紹介します。
今回は【現在行われていること】と【現在まで継続していること】の表し方です。
次回は【未来に起こること】と【過去に起こったこと】を扱います。
<語句>
今回と次回を合わせて全部で4つの例文を使いますが、まず、すべてで共通に使う語句を説明しておきます。
(1) puyo = 住む = live
・発音のイメージは /ぷおゆお[/]/ です。
[/]に声門閉鎖(glottal stop)があり、そのためyoに勢いがあります。
/ぷお/ は「ぷ」と「ぽ」の間くらい、 /ゆお/ は「ゆ」と「よ」の間くらいの音です。
yは舌の両サイドを上げていったん奥歯に押し当てるので、/yo/をゆっくり発音すると /いよ/ のようになります。
発音全体を通して口の形や顎の位置は変えません。舌だけで変化をつけます。
(2) ko = 私は = I
・発音のイメージは /こう/ です。
「く」と「こ」の間くらいの音です。/くお/ と書いてもいいかもしれません。
(3) sa = …に = in ...
・発音のイメージは /さ/ です。
・後ろに場所をつけると「…に」という意味になります。ただし、他にもさまざまな意味で用いられます。
(4) Dumaguete = ドゥマゲテ
・発音のイメージは /どぅまげて/ です。
<基本例文1>
Nagpuyo na ko sa Dumaguete karon.
<日本語訳>
私は今ドゥマゲテに住んでいます。
<解説>
Nagpuyo na ko sa Dumaguete karon.
・発音のイメージは /なg ぷおゆお な こう さ どぅまげて かろn/ です。
【現在行われていること】
・現在の状態、または現在進行中の動作を表すにはnagを動詞の前につけて「nag+動詞」とします。
nagはすでに何かが始まって今に至っている、または現在進行中であることを表す接頭辞です。
ここでは、karon「今」とともに用いられることで現在進行中であることを表しています。ただし、文によっては「今まで」という意味を持つこともあります(<基本例文2>参照)。
・naは「すでに」という意味。なくても文は成立しますが、これによってすでに進行中であること表せるので、用いることが推奨されます。
・karonは「今」という意味。文頭か文末に置きます。発音のイメージは /かろn/ です。/n/ は舌の先を上の歯茎の裏につけた状態です。
・全体の文の基本構成は以下の通りで、これをセットで用いることで「今私は…しているところです」という意味を表せます。
Nag+動詞+na ko ... karon. = 私は今…しています。
・sa Dumaguete「ドゥマゲテに」はNagpuyo koの後ろに置きます。
<基本例文2>
Nagpuyo ko sa Dumaguete sa duha na ka bulan.
<日本語訳>
私はドゥマゲテに2ヶ月住んでいます。
<解説>
Nagpuyo ko sa Dumaguete sa duha na ka bulan.
・発音のイメージは /なg ぷおゆお こう さ どぅまげて さ どぅは な か ぶーらn/ です。
【数の表し方】
・duhaは「2」という意味。
後ろに名詞をつけて「2つの…」という意味を表すときは、個数を表すka /か/(=kabuok /かぶおk/「部分、一片」)をつけて、
数詞+ka+名詞
とします。
ここでは、「月」がbulan /ぶーらn/ なので、
duha ka bulan
で「2ヶ月」という意味になります。
sa /さ/ はここでは「…のときに」という意味を表していますが、「…の間」という意味を強調するにはsulod /すろうd/「…の範囲内で(within ...)」をつけて、
sulod sa duha ka bulan
とすることもできます。
【現在まで継続していること】
・現在までの継続は英文法で言えば「現在完了」の一用法ということになりますが、ビサヤ語には特に現在完了という特別な言い方があるわけではありません。
・以下のような部分表現の組み合わせで全体の意味を出します。
(1)「今」または「今まで」を表すnagを動詞の頭につけます。
(2)「すでに」という意味のnaを文中の適切なところに入れます。ここでは、duhaの後ろに入れます。このnaは時を表す数字の後ろに入れるのが適当だということです。
(3)継続であれば、継続の期間を表す語句をつけます。ここでは(sulod) sa duha ka bulanです。
・以上を合わせると、
Nagpuyo ko sa Dumaguete sa duha na ka buan.
となります。
・sa DumagueteをNagpuyo koの後ろに置けば完成です。
今回紹介した時制の表現は<基本例文1>も<基本例文2>も「今」に関わる表現でした。
<基本例文1>は「今」の時点での状態や現在進行中の出来事を表す表現で、英文法で言えば現在形または現在進行形にあたります。
<基本例文2>は「今に至るまで」の出来事を表す表現で、英文法で言えば現在完了(特にここでは継続の用法)にあたります。
しかし、ビサヤ語では両者の区別は karon「今」や sa duha ka bulan「2ヶ月間」、na「今までにすでに」という時制に関する副詞的表現で演出されるものであって、動詞に付加される nag は共通です。
私はこれを学習しながら、日本語と似ていると感じました。実際、日本語訳は時制の副詞以外は同じなのですから。アジアの言葉の共通性でしょうか。
次回は未来と過去の表現を紹介したいと思います。
(S)